どうも、先輩です。
昨年の10月に秋葉原にあるDratewka(ドラテフカ)さんで革靴を磨いてもらった。
革靴に特段こだわりのない人からすると、そもそも靴を定期的に磨くことや、ましてやお金を支払い、靴磨きを依頼すること自体考えられないかもしれない。
一方で、私はプロの靴磨きにとても興味があった。その理由の一つは、“鏡面磨きの正解”を一度見てみたかったからである。
鏡面磨き(ハイシャイン)というと、革靴ビギナー泣かせのテクニックである。ギターでいうとFコード、スマブラでいうと空ダのようなものであり、一度できるまで正解がよく分からない初心者の壁である。(革靴ブログの読者には伝わりにくい例え…)
私もYouTube等を参考に何度か鏡面磨きにトライしてみたが、「これで良いのか…?」とイマイチ光らない自分の革靴を見てモヤモヤしていたのである。
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| 初めての鏡面磨き 「思ってたのと違う」 |
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2回目の鏡面磨き 「前より光った」 |
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3回目の鏡面磨き 「何とか光らせたがめちゃくちゃ時間かかった(これであってる?)」 |
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また、プロに靴磨きをしてもらいたい理由がもう一つあった。
私事ではあるが、昨年結婚式を控えていて、せっかくの晴れの日なのでプロに磨いてもらったピカピカの靴で迎えたいと思っていたのである。
そこで、結婚式で履くために購入した、スコッチグレインのストレートチップ、“インペリアルブラック”をドラテフカさんで磨いてもらうことにした。
ドラテフカさんにお願いした理由は、後輩と秋葉原の“常陸野ブルーイング”で飲んでいたときに見かけ、何となく気になっていたからである。
このお店は、靴磨きと靴修理をそれぞれ別の方が担当されており、靴磨きは折茂さんという方がお一人でやられているそうだ。
折茂さんに、「鏡面磨きやってみたんですけど、うまくできているかよく分からないんですよね。」と言ってみたところ、「そうですか?結構お上手にできてると思いますよ。」とお世辞だと思うが褒めてくれた。
こちらのお店、靴を預けて磨いてもらうこともできるが、折角なので鏡面磨きのコツも教えてもらいたいと思い、目の前で磨いてもらうことにした。
馬毛ブラシで埃を落としてもらった後、まずは汚れ落としを…と思ったら、何だか見慣れない、固形のワックスのようなものを塗るところからスタートした。
先輩にはワックスにしか見えなかったため、いきなり鏡面磨きから始まるのか…?と不安に思った。勇気を出して、「これは何ですか?」と尋ねてみた。
すると、「これは固形のクリーナーで、古いワックスのような革の表面の汚れを落とすために使うものですね。」と。
ワックスかと思ったら、なんとワックスを落とすためのものだった。(クリーナーの名前は聞きそびれた。)
その固形クリーナーを使いながら、折茂さんが一言、
「あ、黒じゃなくてニュートラルのワックス使っているんですね。」と。
使っているワックスの色がわかるんだと感心しながら、「黒と茶の両方の靴に使えるかと思って、ニュートラル買ったんですよね。」と素人丸出しの返事をすると、「黒の靴には黒のワックスの方が、鏡面しやすいですよ。」と教えてくれた。
次に、よく見慣れたブートブラックのツーフェイスローションが出てきたため、少し安心した。
折茂さん曰く、「固形クリーナーで革の表面の汚れを落とし」、「液状クリーナー(ツーフェイスローション)で汗等の革に浸透した汚れを落とす」とのことである。
言わば、固形クリーナーは“クレンジング”、液状クリーナーは“洗顔”だというのである。
靴磨きは女性のお化粧によく例えられるが、これにはなるほどなと頷かされた。先ほど、固形クリーナーを使っているときにワックスの色を見事に当てたのも、ワックスだけを落としていたからなんだと理解した。
2段階の汚れ落としをしてもらい、私のインペリアルブラックも満足気である。
続いて、デリケートクリームで保湿する工程に入る。
デリケートクリームらしきものが、十種類以上あったので、「これ全部デリケートクリームですか?」と尋ねると、「そうですね。いっぱいありますけど、ほとんど一緒ですね。靴磨き選手権に出るので、研究のために色々試してみたんです。」と。
そして、研究の結果、ご自身が納得のいくオリジナルのデリケートクリームを作るに至ったそう。
靴磨き選手権の話が出たので、どういうものなのか聞いてみた。
靴磨き選手権は、20分という制限時間内に、出された新品の靴を磨くのが大まかなルール。制限時間がかなり短いので、完璧な状態で磨くのは到底無理で、いかにその時間内で光らせるかがポイントらしい。
「大会で磨いたクオリティでは、とてもお客様には提供できないですよ。」と折茂さん。靴磨き選手権の名前は聞いたことがあったが、時間をかけて磨きを競い合うものだと思っていたので、そこまでスピード勝負な世界だとは思っていなかった。(ちなみに私は3回目の鏡面磨きのとき1時間以上ワックスと格闘していた…)
機会があったら大会の様子を見てみたいものである。(そもそも部外者が見れるのか知らないが。)
デリケートクリームでの保湿が完了し、次は乳化性クリームの工程に入る。いつも使っているクリームは何か聞かれたため、ブートブラックと答え、お馴染みの黒のブートブラックで磨いてもらった。普段使っているもので磨いてもらえるのはありがたい。
続いていよいよワックスの工程に入った。
しかし、肝心なときに電話が入り、この工程をしっかり見ることができなかった。
電話を終え5分ほど経った頃戻ると、手際よく鏡面磨きが進められていた。
その後もワックスを塗り、水で湿らせたネルで磨くという工程を数回繰り返し、トータル1時間ちょっとで靴磨きが終了した。
そして、磨き終えた姿がこちら。
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お店で磨いてもらった直後の写真 |
やっぱプロって凄い。
とても月並みな感想だが、シンプルにそう思った。
自宅についてからもニヤニヤしながらパシャリ。
キャップの輝きはもちろんのこと、注目したいのはヒール。
iPhoneが映っている…キャップは自分でも何とか光らせることはできたのだが、ヒールは中々上手くできず自分でやるのは諦めていたところだった。
肝心のワックスの使い方は、相変わらずよく分からないままであるが、ワックスを使う前の汚れ落としの大切さや、道具の大切さ(黒の靴なら黒のワックス)等、色々な要素が絡み合った結果の鏡面磨きだということがよく分かった。
数十年かけても、同じレベルに達するのは難しいと思うが、今回依頼して、この靴を鏡面する際の目指すべき姿がよく分かったので、これに出来るだけ近づけるよう日々鍛錬したいと思った。(早速、黒のワックス、買いました。)
それと、後輩以外の人と革靴について語る機会がほぼなかったので、革靴の話ができるという意味では、このようなお店は貴重だなと思った。(革靴以外にも、楽器の話とか色々お話させてもらいました。)
またそのうちドラテフカさんで靴磨きをお願いしたいと思った先輩であった。
後輩のひとこと
「秋葉原のあのお店ですね。ビール美味しかったですね。あの頃はそんなに革靴の話をしてなかったような…。
鏡面磨きできると、靴磨きが趣味って胸を張って言えますよね〜。僕はもう少し"しない派"を貫きます。」
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